2017年10月6日号 Vol.311

作曲家シュワルツ新作
意外性に富むドイル演出
「お気に召すまま」


Bob Stillman and Ellen Burstyn. Photos by Richard Termine


Andre DeShields and Hannah Cabell. Photos by Richard Termine


Kyle Scatliffe and Hannah Cabell. Photo by Lenny Stucker


名作ミュージカル「ウィキッド」や「ピピン」の作曲家スティーブン・シュワルツが新作を制作すると知って俄然色めき立ちました。それがこのクラシック・シアターカンパニーで上演中の「お気に召すまま」です。
しかも演出は役者自身に楽器を演奏させることで有名なジョン・ドイル。2人がシェイクスピアの喜劇をミュージカルにする!と聞いたら、ざわめかない舞台関係者はいないでしょう。大物のシュワルツですらオフの小劇場から始めるんだ。200人も入らない小さな劇場だからチケットは争奪戦だろうな〜と、発売日にネットにかじりついていると、あれ? あっさり最前列が取れてしまいました。ついていたのか? と思い、プレビューが始まってからTODAY TIXを見ると、20ドルの当日ロッテリーラッシュまで出ています。シュワルツ人気は、そこまで凋落したのかと思い、当日劇場に入ると、さすがカンパニーの50周年記念の第一弾。これまでのどの作品よりも最大限に客席を広げ、1人でも多くの人を詰め込む準備が出来ていました。
まず目に付くのは、劇場中をさまざまな高さで埋め尽くす3種類のドングリ型の電燈です。シェイクスピア作品に少し詳しい人なら、主人公たちが追われて逃げ込んで行くアーデンの森を表しているんだな、とちょっと嬉しくなります。
そして、三々五々キャストが登場。真ん中の衣裳ケースの上に芸歴60年、御歳84歳のエレン・バースティンが座り、分厚い革張りの「お気に召すまま」の本開くと、物語はスタート。ところが、このストーリーテラーのおばあちゃんがしゃべらない! セリフをしゃべるのは本を読む他のキャストだけ。意外性に富むドイル演出、最初からやってくれるな、という感じでした。
しかし、前奏曲でバイオリンなどの生演奏はあるものの、いつ本格的な歌が始まるのか…前のめりになって待ち続けるが、10分経っても20分経ってもまだ歌わない!
プロレスのシーンが終わり、1幕が終わり2幕目に入ってから、ようやく1曲目をピアニストが歌い始めました。これがジャズなのです! 耳に残る名フレーズで有名なシュワルツも、ドイルにならって意外性を強調したのかなと思ってしまいました。でも、2曲目も無難。脳裏に刻まれる類いのメロディではありません。
3曲目の「スプリング・タイム」になって、ようやくシュワルツらしいメロディアスな曲が飛び出しました。
ここで主人公の公爵の娘ロザリンドが追放され、男装してギャミニードを名乗って森に逃げます。兄に命を狙われ、意中の相手オーランドと運命の邂逅をするのです。つまり、森に入るまで延々見せ場を引っ張るドイルの計算され尽くした演出だったわけです。ミュージカルではなく、普通の芝居でした。
ロザリンドを忘れられないオーランドは、森の木々に愛の詩をぶら下げます。これをドイルは、どんぐり電燈にナイフで刻み込むという手法で表現してみせました。詩を刻まれた木の実は、そこだけ命を吹き込まれたように、緑から白へと色を変えます。
オーランドはギャミニードを男だと思い込んでいるため、恋の病は治りません。ギャミニードは自分を告白の練習台にすればいい、と恋人ごっこを始めるのです。
もちろん、結末は大ハッピーエンド。シュワルツの曲目当てに行った人は9曲しか奏でられないことに不満を覚えるかもしれません。しかもその9曲中、3曲は「スプリング・タイム」の繰り返しです。でもこの明るい「スプリング・タイム」が良いのです!
たった1曲で客を大満足させるシュワルツの才能に脱帽。ハートウォーミングな芝居で、あなたも芸術の秋を満喫してください。(佐藤博之)

As You Like It
■10月22日(日)まで
■会場:Classic Stage Company
 136 E. 13th St.
■$50
■上演時間2時間10分
classicstage.org/as-you-like-it


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